地域医療BCPについて
京都大学防災研究所・社会防災研究部門・地域医療BCP連携研究分野について
災害時の医療機能の維持が現在、新たな課題となっています。熊本地震・大阪北部地震・北海道胆振東部地震では病院機能が停電・被災することにより、大規模な入院患者の転院が行われるという事態が発生しました。熊本地震の反省を踏まえ厚生労働省は災害拠点病院に対して病院BCP作成の義務化を行う等、災害時の医療機能の維持は非常に重要な課題となっています。
総合防災学の共同利用・共同研究拠点である防災研究所、災害拠点病院である医学部附属病院が共同で地域医療BCP連携研究分野を設置しました。地域医療BCP連携研究分野では災害発生直後の超急性期の災害医療の確保、その後の地域単位での医療体制維持を可能とする医療システムの構築、地域医療BCPについて下記のような研究を行います。
- 災害時の医療機関における業務継続性に関する評価手法の開発
- 災害時の地域医療連携のための情報共有システムの開発
- 地域医療BCP構築手法の開発
ミッションステートメント 20190625
中長期目標
地域医療BCP協創の「場」の提供
災害時の地域医療をマネジメントをする仕組みがない現状では,医療資源が減少し,医療ニーズが高まる災害発生時に限られた資源を上手く活用できない。そこで,災害時地域医療を強靭化するための事業継続計画,“地域医療BCP(Bussiness Continuity Plan)”,を様々な分野の関係者が連携して創造し,実践を通してカイゼンする場を提供する。
「京都モデル」の開発と検証
当分野の特徴として,マルチファセティット(医療・工学・情報・法学・倫理・経済からの多面的評価)およびマルチセクター(産官学民連携)な研究開発環境があげられる。京都大学の保有する豊かな研究資源を活用し,マルチハザード(地震災害、気象災害、火災、人為災害、および複合災害),マルチコンシューマー(地域住民、法人、インバウンド、医療従事者),マルチフェーズ(超急性期から慢性期まで),をキーワードに,未踏複合研究領域の開拓に挑む。
人材育成
複数の研究領域にまたがる医療防災に関する専門知識を有する人材を積極的に育成する。地域医療BCPをコーディネートできる人材を育成するために,BCPマネジメント人材の資格創設やカリキュラムの策定,クロスディシプリナリー教育の実践に取り組む。
具体的な研究テーマ
広域展開可能な世界標準の災害医療モデル
- (例)WHOとの連携による日本の災害経験を生かしたモデルの構築
- (例)スケーリング性分析に基づく柔軟性の高い災害医療モデル
- (例)災害医療にかかるネットワーク分析手法の確立
災害時の地域医療継続を可能にする情報システム
- (例)千年カルテシステムの利用法検討
- (例)災害医療情報インフラ
- (例)地域のリソース情報をまとめたライブラリを作成
災害発生時の医療機能継続性を迅速に評価するツール
- 三菱財団:多職種連携による災害時の病院避難に関する実態把握と事業継続計画(BCP)に基づく病院避難意思決定支援モデルの開発
- 防災研究所熊本地震特別緊急研究:熊本地震における災害拠点病院の地震被害の把握と防災対策の構築
- (例)建築の専門家が医療施設の災害後の安全性を確認できる仕組みの構築
- (例)モニタリング・画像分析技術を利用した医療機能低下度評価
地域の医療機能脆弱性を評価する手法
- 文科省首都圏レジリエンスプロジェクト:医療インフラ・医療機器の脆弱性評価マニュアルの開発と実践
- JSPS2国間連携プログラム:オークランド大学との災害時医療機器・インフラのVRシミュレーション
災害後の医療事業継続性を可能にする仕組み
- 防災研究所一般共同研究:災害拠点病院の地震時事業継続性評価メソッドの構築
- (例)社会的インパクト評価(医療経済)